しゅー太の奇譚回想記

興味の赴くままに、風のようにふらふらと

【レビュー/感想】救いをここに。『劇場版 すみっコぐらし』

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『すみっコぐらし』の絵は著作権があるので、チキって風景写真を貼りました。

12月1日は「映画の日」らしいですね。

1896年に神戸市において日本で初めて映画が上映された11月25日にちなんで制定された記念日とのこと。(11月25日じゃきりが悪いから12月1日になったらしいです。)

この日は全国の映画館で割引などの記念事業が開催されています。

せっかくなのでこれを利用して映画を見ようと思い立ち、いろいろ探しているうちに見たい映画を発見。

 

それがいま巷で噂のこの映画

www.san-x.co.jp

『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』

子供向けアニメの映画とのことですが、どうやら大人が見ても面白いらしい。

気になったので、この映画に決定。

さっそく映画を見てきたので、その感想を載せたいと思います。

ネタバレありになるので、ご注意ください。

 

ちなみにこの映画を知るまで「すみっコぐらし」というものを存じませんでしたが、この記事を書くために調べてみると小学生くらいがターゲットになるアニメみたいですね。よく知りもしないけど、めんどくさかったのでほとんど事前情報一切なしでいきましたが、十分すぎるほど楽しめました

 

映画の券は当日劇場で買いましたが、ほとんど満席。「そんなに人気のコンテンツなのか・・・?」と少しビビる。空いてる回を探してなんとかチケットを購入。目的の回より2つも後ろになってしまったが、満席になるくらいだから逆に期待が持てそうだ。

 

上映時間になりシアターに入るとそこには大勢のちびっこが。

小学生もちらほら見えるから結構幅広く愛されているコンテンツなんだなと思うと同時に、「なんか物凄く場違いなところに来てしまったのでは」という恐怖心が心をじわじわ満たしていく。

よくよく見てみると子供の大半が女の子とその保護者。

シアター自体も少し小さいのでなるほど、満席になるはずだ。と冷静に思考しながら、気分はまるでプリキュアおじさん

「お願い通報しないで!」と震えながら座席へ着く。

 

そして映画が始まる。以下映画のあらすじ(公式サイト引用)

ある日すみっコたちは、お気に入りのおみせ「喫茶すみっコ」の地下室で、古くなった一冊のとびだす絵本をみつける。
絵本を眺めていると、突然しかけが動き出し、絵本に吸い込まれてしまうすみっコたち。
絵本の世界で出会ったのは、どこからきたのか、自分がだれなのかもわからない、ひとりぼっちのひよこ・・・?
「このコのおうちをさがそう!」新しいなかまのために、すみっコたちはひとはだ脱ぐことに。
絵本の世界をめぐる旅の、はじまりはじまり。

映画の冒頭で各キャラや世界観の説明が入る親切設計なので、初見でも安心。

ガンダムOOみたいに置いてけぼりにならないよ!(当たり前) 

あと観客が子供ばかりなので昨今話題になっている、スマートフォンを上映中にチェックするような人間はおらずマナーのいい観客ばかりなので、快適に映画が見れます。

みんな子供を見習え。子供でもいい悪いはちゃんと判断できるんだぞ。

 

まあ、まず見終わって最初に出た感想は、

 

遠慮するな、対象年齢何歳か言ってみろ。

というものと

ハッピーエンド・・・?

の二つ。

 

絵本の中に吸い込まれてしまったすみっコたちは、迷子のひよこと出会い、ひよこのおうちを見つけるためにいろんな物語の登場人物にあてがわれながら様々な絵本の中の世界(マッチ売りの少女、人魚姫、赤ずきんなど)を冒険する。

お話自体はほのぼのしており、緩い感じに進んでいくが、一向にひよこの居場所が見つからない。

 

それもそのはず、ひよこはその本の白紙のページに描かれた、ただの落書きに過ぎなかったからだ

その白紙のページにはそのひよこ以外は存在せず、ずっと一人でさみしくなったひよこは仲間を探すための旅に出たのだ。

 

しかし、ひよこは「どこからきたのか」といった自分のことは何も覚えておらず「仲間を見つける」ということだけを覚えていたところ、絵本の外からやってきたすみっコたちと遭遇し仲間だと認識する(おそらく共に「本来の絵本にとって異質な存在」なため)。

そしてすみっコたちはいろんな世界(ページ)を巡りながらもようやく最後のページ「白紙」に到着し、ひよこはすべてを思い出す。

冒頭とこの時ひよこの体にノイズがかかる描写はなんとも言えない重さを感じさせる。

確かに「ひよこが出てくるメジャーな童話なんてあったか?」と思いながら鑑賞していたが、

居場所なんてものは最初からなかった

なんていう衝撃の展開に思わず息が詰まる。

 

ひよこの話を聞いて、これまで一緒に過ごしてきたすみっコたちは「(絵本の外へ出て)一緒に暮らそう」と提案する。独りぼっちだったひよこはとうとう本当の仲間を見つけて、絵本を飛び出しみんなで仲良く暮らしましたとさ。めでたしめでたし。

 

なんて言うとでも思ったか?

 

外に出られる穴を見つけたがそれは遥か上空。

すみっコたちとひよこは他の物語の世界から持ってきた材料で、即席の塔を作っていく。そして、最後にひよこが頂上に台を置いて塔が完成し、穴に触れるが何故かはじかれる。そう、あくまで絵本に書かれた存在であるひよこは絵本の外に出られないのである

 

すみっコたちと一緒に暮らせることを希望にして、一生懸命塔を建設していたひよこの心情を思うと心が張り裂けそうになる。

 

どうあがいても出られない現実を前にひよこは悟る。

そしてすみっコたちが現実世界に帰る姿をひよこはただ、塔の下から眺める。

すみっコたちもひよこが外の世界に出られないことを知るが、どうしても割り切れない。しかし、現実世界への穴は次第に小さくなっていく。

 

ひよこは悲しそうに手を振り、すみっコたちもまた現実を受け入れ穴から絵本の世界を脱出する。外に出たすみっコたちが見たものは、白紙のページに一羽だけ描かれている落書きのひよこ。

 

すみっコたちは現実世界に無事帰り、迷子のひよこも元居た場所に戻れてよかったね!

 

んなわけあるか。

 

一応最後にはすみっコたちが白紙のページにひよこの仲間やおうちをつけたして、にぎやかにする様子が描かれてる。が、それにしても、完全なハッピーエンドではないですよね?すみっコたちが基本ネガティブな性格をしているということは、会社の後輩からは聞いていたが、ネガティブのベクトルが違うだろ

 

最初の方は緩くてかわいいお話が展開されていたが、終盤になるにつれて不安な影が濃くなっていく。特に中盤で一足先に元の世界に戻るすみっコが現れるのだが、身に着けていた絵本の世界のお花が穴にはじかれる描写があり、伏線も綺麗に張られており感心した。

 

とは言え、ひよこはひよこの世界(白紙のページ)で生きていくしかなく、たまたまとは言え外の世界からやって来たすみっコたちと出会えたことで、白紙をにぎやかにしてもらえたのは不幸中の幸いと言えるだろう。

 

結末を要約すると

 

自分の居場所と仲間を探しをしていたひよこは、決して一緒にはなれない仲間と別れ、その仲間たちに居場所とひよこ仲間を与えてもらう

 

という、とても「解決してよかったね!」なんて言えない結末となっている(子供向けの話を曲解しすぎている節は自覚している)。

 

映画が終わった後、「絵本から出て『みんな仲良く暮らしましたとさ』じゃ駄目だったんですかね・・・?」という思いがあったが、何か意図があるのだろうか。

個人的には、

「どんなに嫌でも現実を受け入れる強さ」を子供たちに覚えてほしかったのではないかと思う。

この先、生きていく中で絵本の中みたいに幸せなことばかりではなく、辛いことや認めたくないことに遭遇する。絵本とすみっコたちが暮らしていた世界を決して相いれないものとすることで、絵本みたいな世界はあくまで絵本の中だけ。マイナスなこともこの世の中にはあるけれど、それを乗り越えなければならないことが必ず来るということを作品として描いているような気がする。

 

最終的な感想としては、とても良く出来てる映画。

ただ、終盤まで基本単調な話が続くので、飽き性にはつらいか。

とは言え時間も広告を除いて1時間くらいなので、ちょうどいい時間だと思う。スマホを見るのが我慢できない若者もこれなら大丈夫(くどい)。

 

問題はイオンシネマでしか上映していないという点。

他の劇場でも公開すれば気軽に見られるだろうに。場所が限定されるのは少しもったいない気もするが、こればかりは仕方ないか。

 

みなさんもぜひ公開が終わってしまう前に見に行かれてはいかがだろうか。

心が癒されるかはあなた次第だが、考えるべきことが生まれるかもしれない。